【第4回定期演奏会】

 

O.レスピーギ リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲

リュートは古典楽器の弦楽器の総称で、弦の本数や形状は多種多様でした。レスピーギ(1879-1936)は古き良き美点を残存させつつ、それを高度な現代的芸術作品として完成させました。この曲は全曲を通じて旋律が美しく、全く感動させられるものです。

第1曲 イタリアーナ

作者不明のリュート曲集から取材した曲で、明るく流麗で実にすばらしいこの旋律は、これぞ中世イタリアの音楽と言った感じを起こさせます。

第2曲 宮廷のアリア

ヴィオラに続き、第一バイオリンで奏される甘美なメロディーのアリアは「お前に恋することは悲しい」と言う歌で感動的な旋律になっており、チェロのピッチカート伴奏はリュートを再現したものです。

第3曲 シチリアーナ

全曲すべて美しいメロディーで、この曲だけをアンコール用として演奏する場合もある。

第4曲 パッサカリア

元々ヨーロッパで流行した舞踏曲でパッサカリアとは「街を歩く」と言う意味で3拍子の緩やかな舞曲でした。全曲の締め括りとして華やかに変奏が展開される壮大な楽曲になっています。

 

G.B.ペルゴレージ スターバト・マーテル <聖母哀歌>

(ソプラノ: 井戸章子、 アルト: 髙寺範子)

「スターバト・マーテル」というラテン語の歌詞で始まるこの曲(以下、略してスタバト)は、合唱経験のある方ならともかく、ふだんあまり演奏されない曲なので一般には馴染みの少ない曲かもしれません。が、とってもきれいな曲です。

「スタバト」は13世紀に生まれたカトリック教会の聖歌の1つで、「悲しみの聖母」と訳され、十字架に架けられた御子イエスを悼み、その傍らに立ちつくす聖母マリアの悲しみの思いを歌った詩(曲)です。この詩は中世の詩の中でも極めて心打つものの1つとされ、ヴィヴァルディ、ロッシーニ、ドヴォルザーク、プーランク、など多くの人がこの詩に惹かれて作曲しています。

本日の「スタバト」は、イタリア出身、ペルゴレージ(1710-1736)の作品で、弦楽器とソプラノ,アルトというシンプルな構成の全12曲からなるうちから6曲(No.1,3,6,7,9,12)を抜粋したものです。まず1曲目は、緊迫した時を刻むかのような低音部と、切ないほど悲しく美しい旋律の高音部の弦楽器で始まり、続いてソプラノ、アルトが悲痛な叫びの中の深い悲しみを歌います。そして、中盤からは、アリアの独唱、美しい二重唱へと進み、最後の曲の前半では、遅いテンポの感傷的な旋律で歌われ、後半に入ると、一変して速いテンポになり、“魂が天国の栄光に捧げられるように”と願う祈りが、力強い“アーメン”の二重唱となって終盤を迎えます。

第1曲 聖母は悲嘆の内に、御子の十字架の前に立ち

第3曲 御子の祝されし聖母の哀傷はいかばかりか

第6曲 聖母は御子が死苦の末息絶えるを眺め

第7曲 悲しみの泉なる聖母よ、我をして悲嘆を感ぜしめ

第9曲 聖母よ、十字架に釘刺されし御子の傷を我に印し給へ

第12曲 肉体は死して朽つるも、聖霊は天の栄光へ、アーメン

 

A.L.ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲「四季」

(ヴァイオリン独奏: 西田美音子)

ヴィヴァルディ(1678-1741)のヴァイオリン協奏曲集「四季」は日本で最も人気のあるクラシック音楽のひとつですが、この作品が知られるようになったのは意外にも遅く、20世紀後半になってからのことでした。ヴィヴァルディの音楽は20世紀に入ってからようやく本格的な研究が行われるようになったからです。「四季」は1960年代から起きたバロック音楽ブームの先駆けともなりました。ヴィヴァルディは教会のヴァイオリニストだった父から音楽の手ほどきを受け、幼少期からヴァイオリンに目覚しい才能を示しました。

のちにはヴェネツィアの少女ばかりの孤児院に併設されていた音楽院で教師を務め、そこで多くの名曲を残しました。この「四季」も高度な演奏技術を持つ少女音楽家たちのために作られた作品です。

このヴァイオリン協奏曲集「四季」は、全12曲からなる「和声と創意への試み」の初めの4曲で、1720年頃作曲されたといわれています。それぞれの曲に「春」「夏」「秋」「冬」という題がつけられ、まとめて「四季」と呼ばれるようになりました。「四季」は、当時さかんに作曲された複数の独奏部をもつ合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)ではなく、独奏ヴァイオリンとオーケストラが競い合う形でできています。こうした点がいつも時代に数歩先行していたヴィヴァルディらしさといえます。コンチェルトの新時代を切り開いたヴィヴァルディは、彼自身がヴァイオリンの名手だったためか、ソロ楽器としてヴァイオリンを

選ぶことが多く、この「四季」でも独奏ヴァイオリンが華やかな役割を演じます。また各曲には季節の情景描写を表すソネット(短詩)が記され、音楽が視覚的に解説されています。

ソネットと音楽は見事なまでに結びつき、季節の情景が生き生きと描かれます。この曲が多くの聴衆や演奏家に愛されているのは、音による季節の描写に素晴らしい魅力があるからだといえます。ヴィヴァルディが四季の風景を弦楽合奏でどのように表現したかという点に注目し、ソネットから想像して聴いていただくと、曲の面白味がいっそう増すことと思います。ヴィヴァルディが描いた四季折々の音楽から、バロック時代の人々の生の営み、季節ごとの自然の風景などが浮かび上がってくるでしょう。

このように「四季」は音による描写力に富んだ、しかもシンプルな構成でできており、曲そのものがありとあらゆる演奏のスタイルを受け入れる懐の大きさを備えています。それゆえ、演奏する音楽家によって様々な表現の違いが生まれ、いろいろな演奏の味付けを楽しむことができることもこの作品の面白さではないでしょうか。

今日、独奏ヴァイオリンを弾いてくださる西田美音子さんと私たちが繰り広げる「春」「夏」「秋」「冬」それぞれの季節のなかにあるドラマをじっくりと味わっていただければ幸いです。

 

協奏曲第1番 「春」

第1楽章 Allegro

春が来た。小鳥たちは楽しく歌い、優しいそよ風に泉もつぶやき始める。突然、空は黒い雲に覆われ、稲妻と雷鳴が襲ってくる。嵐が静まると、小鳥たちは再び嬉しそうに歌いだす。

第2楽章 Largo

花盛りの美しい牧場では木々の葉が優しくざわめき、羊飼いは忠実な犬を傍らに眠っている。

第3楽章 Allegro

バグパイプの陽気な調べに合わせ、ニンフ(妖精)と羊飼いは愉快に踊る、輝くばかりの装いの春の中に。

 

協奏曲第2番 「夏」

第1楽章 Allegro non molto

厳しい太陽が焼けつく空の下で、人々と家畜は元気を失い、松さえ枝を枯らす。カッコウが鳴き、山鳩と五色鶸(ひわ)がしきりに歌う。西風が吹く。突然、北風が襲いかかる。羊飼いは自己の運命を憂いて泣く。

第2楽章 Adagio

羊飼いは疲れた体を休められない。稲妻と激しい雷鳴、そしてハエとアブの怒り狂う群れに脅かされて。

第3楽章 Presto

ああ、彼の恐れは現実となった。稲妻と雷鳴がとどろき、雹が降って麦の穂先を叩き落とす。

 

協奏曲第3番 「秋」 第1楽章 Allegro, 第2楽章 Adagio molto, 第3楽章 Allegro

第1楽章 Allegro

村人は踊りと歌で実りの秋を祝う。バッカスの酒に紅潮し、喜びの果てに眠る。

第2楽章 Adagio molto

安らかで心地よい大気が人々を甘い眠りに誘い、歌も踊りも終わりにさせる。

第3楽章 Allegro

早朝、狩人たちは角笛と鉄砲を持ち、犬を連れて狩に出る。狩人たちは獣を追う。獣は鉄砲と犬たちの音に驚き、疲れ傷つき、力つきて息絶える。

 

協奏曲第4番 「冬」 第1楽章 Allegro non molto, 第2楽章 Largo, 第3楽章 Allegro

第1楽章 Allegro non molto

冷たい雪の中で厳しい風に吹き付けられ、凍え震え、絶え間なく足を踏み鳴らし走る。あまりの寒さに歯をガタガタと鳴らす。

第2楽章 Largo

外は雨、炉辺で静かに平和な時を過ごす。

第3楽章 Allegro

氷の上を転ばないように注意深く進む。急いで足を滑らせ転んでしまい、また起き上がって氷の上を走ると氷が砕け飛び散る。閉じたドアから東南の風、北風、あらゆる風の争いが聞こえる。これが冬だ。しかし冬は喜びを与えてくれる。


ソプラノ 井戸章子

相愛大学声楽科卒。

木川田誠、Mihaela Ungureanu、矢野紀久子 各氏に師事。

都島ストリングス第一回定期演奏会にも出演。

アルト 髙寺範子

相愛大学声楽科卒。

鈴木田鶴子、矢野紀久子両氏に師事。

合唱団紗羅所属。

ヴァイオリン独奏 西田美音子

5歳よりヴァイオリンを始める。

第47・50回全日本学生音楽コンクール大阪大会にて入選。

平成9年相愛高等学校音楽科卒業。

'98年ニース夏期国際音楽アカデミーに参加、マスタークラス受講。

第43回相愛オーケストラ定期演奏会にてコンサートミストレスを務める。

平成12年度相愛大学音楽学部卒業演奏会に出演。

平成13年相愛大学音楽学部を首席で卒業。春のフランドル音楽祭・ジョイントコンサートに出演。

第28回兵庫県大学新人演奏会に出演。

平成14年3より関西シティフィルハーモニー交響楽団のコンサートミストレスに就任。

丹羽順子、田村智恵子、工藤千博、小栗まち絵の各氏に師事。

指 揮 柴 愛

同志社女子大学学芸学部音楽学科演奏専攻バイオリン卒業。

卒業後、関西歌劇団、堺シティオペラなどで副指揮として活動。

現在、奈良女子大学管弦楽団プラハ特別演奏旅行の企画において弦楽アドバイザー又バイオリン2ndのトップを務める。

バイオリンを梅原ひまり、指揮を高階正光、Klaus Hoevelmann に師事。

丹羽順子、田村智恵子、工藤千博、小栗まち絵の各氏に師事。